Intune 構成の棚卸し — 増え続けるポリシーを、説明できる状態に保つ
最終更新:2026-07-22
運用が数年続いた Intune テナントには、「テスト」と名の付いたままのポリシー、退職した担当者が作った意図不明のプロファイル、ほぼ同じ内容の重複ポリシーが、静かに溜まっていきます。1つひとつは無害でも、積み重なると「どの設定が効いているのか誰も説明できない」状態に近づき、監査対応・トラブル調査・環境移行のたびにコストとして跳ね返ってきます。本記事では、Intune 構成の棚卸し——現状を可視化し、不要な設定を整理し、説明できる状態に戻す活動——の実務を整理します。
1. なぜ構成は増え続けるのか
Intune の構成が散らかっていくのは、担当者が怠慢だからではありません。構造的な理由があります。
- 作るより消すほうが怖い:ポリシーの追加は影響を検証してから展開できますが、削除は「消して何かが壊れたら」の不安が先に立ちます。結果、使われていない設定が「念のため」残り続けます。
- 検証の痕跡が残る:動作検証用に作ったポリシーやグループは、検証が終わっても消されないことが多いものです。
- 人の入れ替わり:作成者が異動・退職すると、そのポリシーの意図を知る人がいなくなり、ますます触れなくなります。
- Microsoft 側の進化:設定カタログへの移行や新機能の追加で、同じ目的の設定が新旧2系統存在する、という状態が生まれます。
つまり放っておけば散らかるのが自然であり、意図的な棚卸しの機会を設けない限り、この傾向は反転しません。
2. 棚卸しで何をするのか
構成棚卸しのゴールは「すべての設定について、なぜあるのか・誰に効いているのかを説明できる状態」です。そのために行うことは3つに集約されます。
- 可視化:全ポリシー・プロファイル・アプリ・割り当てを一覧にする。この時点で「そもそも全体像を誰も持っていなかった」ことに気づくケースが少なくありません。
- レビュー:一覧を関係者で確認し、各項目を「維持(意図を記録)」「要調査」「廃止候補」に仕分ける。名前に「テスト」「temp」が入ったもの、割り当てが空のもの、作成者が不在のものが要注意リストの常連です。
- 是正と記録:廃止候補を計画的に整理し、維持する設定には意図(なぜこの設定か・変更してよい条件)を記録する。この「意図の記録」が次回の棚卸しを楽にします。
3. 手作業の棚卸しの難所
棚卸しの最初の一歩である「可視化」が、手作業では最も重い工程になります。Intune 管理センターには構成全体を一覧するビューがなく、ブレードごとに画面を開いて書き写していくことになるためです。ポリシーと割り当て先グループの対応関係、フィルターの適用状況まで含めて一覧化しようとすると、棚卸し本体(レビューと判断)の前に力尽きる、というのが手作業の典型的な失敗パターンです。
さらに、棚卸しは一度やって終わりではありません。半年後にはまた新しい設定が増えています。毎回ゼロから一覧を作り直すのでは続かないため、「可視化は自動で、人はレビューと判断に集中する」という分担にできるかが、棚卸しを定着させられるかの分かれ目になります。
4. 定点観測に変える — 棚卸しを「イベント」から「習慣」へ
理想は、大掃除としての棚卸しを年に1回やることではなく、構成の変化を継続的に観測し、散らかりの兆候を小さいうちに拾うことです。そのために有効なのが、次の2つの定点観測です。
- 定期スナップショット+差分:構成を定期的に記録し、前回からの変更(何が増えた・変わった・消えた、誰が変えた)だけを確認する。全体を毎回見直すより圧倒的に軽く、意図しない変更にも早く気づけます。
- 「説明のない設定」の監視:意図が記録されていない設定の一覧を定期的に出し、増えていないかを見る。散らかり具合を測る実用的な指標になります。
監査ログと組み合わせれば「誰がいつ追加したか」まで追えますが、Intune の監査ログは約30日で消えるため、証跡の保全は別途仕込んでおく必要があります(詳しくは関連記事をご覧ください)。
5. TenantSnap を使う場合
当社の TenantSnap は、この「可視化を自動に、人はレビューに」という分担をそのまま実装しています。
- 可視化:既定で全37章+付録の設計書を自動生成し、ポリシー・割り当て・設定値まで一覧にします。棚卸しの土台となる「全体像」がワンクリックで手に入ります。
- 説明のない設定の抽出:ポリシーの説明欄に記入された設計意図は「運用メモ」として設計書に前面表示され、未記入の項目は巻末の付録に一覧化されます。レビューで潰すべきリストがそのまま出てくる形です。
- 割り当ての棚卸し:設計書の付録「割り当ての棚卸し一覧」が、どのポリシー・アプリがどの割り当て先に当たっているかを1件1行で一覧化します。割り当て先から引ける逆引き一覧と、どの割り当てにも使われていないグループの件数も載るため、グループの棚卸しの起点になります。
- 定点観測:定期実行と差分レポートで、前回からの変更だけを変更者(UPN)付きで確認できます。
- 複数テナント(SIer・MSP):2つのテナントの構成を突き合わせるテナント間比較で、標準構成からのズレの確認にも使えます。
説明欄への意図の記入は Intune 側のよい習慣としてそれ自体に価値があります。TenantSnap はそれを「書けば設計書に載る・書かなければ未記入リストに載る」という形で見える化し、記入の習慣づけを後押しします。
6. まとめ
- Intune の構成は放っておけば散らかる。意図的な棚卸しの機会がなければ反転しない。
- 棚卸し=可視化→レビュー→是正と記録。手作業では最初の可視化で力尽きやすい。
- 続けるコツは「可視化は自動・人はレビューと判断」の分担と、差分による定点観測への移行。
- 「説明のない設定が増えていないか」は、散らかり具合の実用的な指標になる。
本記事の製品仕様に関する記述は、TenantSnap の現行バージョンの実装に基づきます。Intune の機能・画面構成は Microsoft により変更されることがあります。