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Intune の設定をテナント間で比較する方法 — 検証と本番、顧客ごとの構成の違いを洗い出す

最終更新:2026-10-12

検証テナントでポリシーを作り込み、本番テナントへ同じ内容を作る。テナント移行で、移行元の構成を移行先に再現する。複数の顧客テナントを預かり、自社の標準構成から外れていないかを確かめる——Intune を運用していると、「2つのテナントの設定がどう違うか」を知りたい場面は意外に多くあります。ところが Intune 管理センターは1テナントずつ操作する画面で、2つのテナントの構成を突き合わせて違いを一覧にする機能は用意されていません。この記事では、テナント間比較がなぜ手間なのかを押さえたうえで、実現する方法を比較します。

1. テナント間比較が必要になる場面

  • 検証テナント → 本番テナント:検証で確かめた設定を本番に作ったあと、値の入力漏れや取り違えがないかを確かめたい。本番への反映作業のたびに発生します。
  • テナントの移行・統合:組織再編や M&A で別テナントへ移るとき、移行元の構成が移行先に揃ったかを確認したい。作業範囲が大きく、目視では漏れが出やすい場面です。
  • 複数の顧客テナントの標準化(MSP/SIer):顧客ごとに構成を作っていると、少しずつ差が生まれます。自社の標準構成(ひな形)と各顧客の構成の違いを把握し、意図した差か、単なるばらつきかを見分けたい。

いずれも知りたいのは「どの項目が片方にしか無いか」「同じ名前の項目で、どの設定値が違うか」の2点です。同じテナントの過去と現在を比べる「変更の追跡」とは目的が違うため、必要になる手段も少し変わります。

2. テナント間の比較が手間な理由

同じテナント内の比較と違い、テナントをまたぐ比較には特有の難しさがあります。

  • ID が一致しない:ポリシーやプロファイルのオブジェクト ID はテナントごとに別の値になります。同じ内容で作っても ID では対応付けられないため、名前など別の手がかりで「どれとどれが同じ項目か」を突き合わせる必要があります。
  • 違って当然の値が混ざる:割り当て先のグループ、テナント ID、ドメイン名などは、テナントが違えば異なるのが正常です。これらをそのまま比べると差分が大量に出て、本当に見るべき違いが埋もれます。
  • 画面での目視には限界がある:管理センターで2つのテナントを並べ、ポリシーを1本ずつ開いて見比べることはできますが、設定カタログのポリシーは1本に数十〜数百の設定を含むこともあり、全件を確かめるのは現実的ではありません。一覧の CSV エクスポートも、ポリシー名などの一覧にとどまり設定値までは含まれません。
  • 名前の付け方が揃っていない:名前で突き合わせる以上、命名が揃っていないテナント同士では対応付け自体が難しくなります。同じ名前のポリシーが複数あると、どれとどれを比べるべきかも曖昧になります。

3. 比較の方法を比べる

テナント間の比較を実現する主な方法を、前提・出力・手間で比較します。

方法概要向き注意点
手作業(画面・CSV)管理センターで2つのテナントを開き、ポリシーを見比べる。一覧は CSV で書き出して照合する。少数のポリシーのスポット確認追加コストはゼロ。ただし設定値の全件比較には向かず、確認者によって精度がばらつく。作業の記録も別に残す必要がある。
Microsoft365DSCPowerShell モジュールで各テナントの構成を書き出し(Export-M365DSCConfiguration)、New-M365DSCDeltaReport で2つの構成の差分を HTML レポートにする。技術者がいる組織での網羅的な比較無償で対象範囲も広い。一方でオープンソースのため、動作検証・更新への追従・サポートは自己責任になる。Intune の割り当てなどで差分が誤って出ると報告されている項目もあり、結果の読み解きや調整が必要になることがある。
Graph API(UTCM など)で自前実装Microsoft Graph で各テナントの構成を取得し、自前のスクリプトで突き合わせる。2026 年に加わった Tenant Configuration Management API(UTCM)でも構成のスナップショットを取得できる。自社の要件に合わせて作り込みたい場合最も柔軟だが、突き合わせのロジック(名前での対応付け、テナント固有値の除外)と保守は自前になる。UTCM は1テナント内のスナップショットと変更の監視(ドリフト検出)の仕組みで、2つのテナントを比べる機能ではない。スナップショットの保持も最大7日のため、比較結果は自分で保存する必要がある。
Microsoft 365 LighthouseMSP 向けの管理ポータルで、複数の顧客テナントを横断して管理する。コンプライアンスポリシーをテナント間で比較する画面がある。CSP パートナーの MSP による顧客管理利用できるのは CSP プログラムに参加しているパートナーで、顧客テナント側にも委任アクセス(GDAP など)が必要。比較できる対象はコンプライアンスポリシーが中心で、構成プロファイルを含む Intune 構成の全体比較とは用途が異なる。
専用ツール構成の取得・比較・文書化を行う製品を使う。比較結果を人が読む文書として残したい場合仕込んだ後の手間が小さく、レポートとして出力されるものが多い。何を突き合わせのキーにし、どの値を比較から除くのかという比較のルールと、費用を確認して選ぶ。

どの方法でも、比較は「その時点での違い」を見るものです。本番への反映後や移行完了時など、確認した時点の結果を日付付きで残しておくと、あとから「いつ時点で揃っていたか」を説明できます。

4. 比較の精度を上げるための準備

どの方法を選ぶ場合でも、次の準備で比較結果が格段に読みやすくなります。

  • 命名規則をテナント間で揃える:名前で突き合わせる方法が多いため、同じ役割のポリシーは同じ名前にしておきます。「Win-コンプライアンス-標準」のように、対象や用途を名前に含めるのが一般的です。
  • 同じ名前のポリシーを作らない:1つのテナントに同名・同種類のポリシーが複数あると、どれとどれを比べるべきかが決まらず、比較の精度が落ちます。
  • 「違って当然」の値を決めておく:割り当て先グループやテナント固有の値など、差があって正常な項目を事前に決めておき、比較の対象から外します。
  • 取得のタイミングを揃える:一方のテナントで作業中のまま比較すると、途中の状態との違いが出ます。作業が落ち着いた時点で、両方のテナントの構成を近い時刻に取得します。

5. TenantSnap のテナント間比較

当社の TenantSnap には、2つのテナントの構成を突き合わせて違いを一覧にする「テナント間比較」があります。各テナントで取得した構成のスナップショットを2つ選ぶだけで、比較結果を Word/PDF の「テナント間比較レポート」として出力できます。

テナント間比較レポートの誌面。差異サマリーの表に分類ごとの件数(比較先のみ・差異あり・比較元のみ)が並び、その下に比較先にだけあるプロファイルの設定一覧と、同名プロファイルの設定値の違い(パスワードの種類・パスワードの最小文字数など)が比較元と比較先の2列で表示されている
テナント間比較レポートの例(v1.56.0 で出力)。サンプルのため、1つの検証テナントで取得した2時点の構成を、テナントA・テナントBとして比較しています。
  • 項目は表示名(プロファイル名・ポリシー名)で対応付けます。オブジェクト ID や割り当て先グループなど、テナントごとに異なって当然の値は既定で比較から除外します。
  • 違いは「比較先のみ」「比較元のみ」「差異あり」の3つに分類して一覧にします。
  • レポートの冒頭には、どこまで項目を突き合わせられたか(両方のテナントで対応付けできた件数・片方のテナントにだけある件数・名前が無いため対応付けできない件数・比較していない値)を表示します(バージョン 1.60.0 以降)。差異が 0 件のときも表示するため、「同じだった」のか「対応付けられなかった」のかを確かめられます。
  • 同じ名前でもプラットフォームなど種類が違う項目は、別の項目として正しく分けて比較します。名前も種類も同じ項目が1つのテナントに複数ある場合のみ、名前での対応付けで取りこぼすことがあり、その旨は実行ログに警告として記録されます。クロステナントアクセスの既定設定など、テナントに1つだけある設定も、1つの項目として比較します(バージョン 1.60.0 以降)。
  • ライセンスの使用数・購入数の増減は、設定の違いではないため比較に載せません(バージョン 1.60.0 以降)。
  • 監査ログ(いつ・誰が変更したか)は、テナントをまたぐと意味を持たないため突き合わせません。同じテナントの変更を追う場合は、通常の差分レポート(変更者・日時付き)をお使いください。
  • 設定の取得で本製品が行うのは構成の取得だけで、お客様のテナントの設定を変更しません(例外は管理者が実行する「テナントでの準備」だけです)。スナップショットとレポートはすべてお使いの端末(またはお客様が指定した保存先)に保存され、取得したデータを当社や第三者に送信しません。

テナント間比較には、比較する2つのテナントそれぞれで構成を取得する必要があります。ライセンスはテナント単位のため、複数のテナントを扱う場合は複数テナント版(MSP/SIer 向け・お問い合わせ)をご検討ください。

6. まとめ

  • Intune 管理センターには、2つのテナントの構成を突き合わせて違いを一覧にする機能はない。
  • テナント間比較の難しさは、ID が一致しないことと、割り当て先など「違って当然」の値が混ざること。名前で対応付け、固有の値を除外する仕組みが要る。
  • 方法は手作業・Microsoft365DSC・Graph API での自前実装・Lighthouse・専用ツール。前提となる体制(技術者・CSP パートナーかどうか)と、結果を文書として残す必要があるかで選ぶ。
  • どの方法でも、命名規則の統一と「違って当然」の値の整理が精度を左右する。確認した時点の結果は日付付きで残しておく。

本記事の Intune・Microsoft 365 Lighthouse・Microsoft Graph・Microsoft365DSC に関する記述は執筆時点の公式ドキュメントに、TenantSnap に関する記述は現行バージョンの実装に基づきます。各サービスの機能・提供条件は変更されることがあります。最新の正確な情報は各公式ドキュメントをご確認ください。